メース(Mace)

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学名
Myristica fragrans(別名:Myristica officinalis

科名
ニクズク科 (Myristicaceae)


概要

メースとナツメグは、同じ樹木 Myristica fragrans から採れる一般的なスパイスです。この樹木はインドネシアのバンダ諸島が原産で、現在ではマレーシアやカリブ海地域などの熱帯地方でも栽培されています。メースは種子を覆う仮種皮(アリル)から得られ、一方でナツメグは種子そのものから得られます。


利用法

  • 経口での使用:
    月経困難症、下痢、吐き気、嘔吐、胃けいれん、鼓腸、胃粘膜炎の治療に用いられます。また、がん、肝障害、月経の増加、尿失禁、妊娠中絶誘発の目的で使用されることがあります。

  • 外用での使用:
    関節痛などの鎮痛剤として使用されます。また、歯肉炎の治療にも用いられることがあります。

  • 食品での使用:
    メースは料理用スパイスとして広く使用されています。また、食品や飲料の風味成分としても利用されています。


安全性

  • おそらく安全
    食品に含まれる通常量で使用する場合は安全と考えられています。米国では、メースとメースオイルは「一般的に安全と認められる(GRAS)」とされています。
    医薬品量で短期間(1日最大1.5gを2回、3か月間)使用した場合も安全と考えられます。

  • 不十分な情報
    高用量や長期使用時の安全性については十分な情報がありません。ただし、関連植物であるナツメグの高摂取で重篤な心血管系、消化器系、神経学的、眼科的、精神的副作用が報告されています。理論的にはメースの高用量使用も同様の影響を及ぼす可能性がありますが、現在までにヒトでの報告はありません。

  • 妊娠中:
    おそらく危険
    医薬品量で使用すると流産の可能性やサフロール含有成分による突然変異誘発作用が懸念されます。

  • 授乳中:
    信頼できる情報が不足しているため、使用を避けるべきです。


副作用

  • 適量での使用では通常、耐容性が高いとされています。ただし、高用量では心血管系や神経系などの重篤な副作用のリスクが理論的に考えられます。

  • 外用使用:
    稀に接触性皮膚炎が報告されています。


有効性

  • 証拠不十分
    いくつかの症状について予備研究が行われていますが、証拠は限られています。

    • 月経困難症:
      初期研究では、メース3gと Cassia fistula 21g を用いたハーブ煎じ液が、月経困難症の痛みと期間を軽減する可能性が示されています。

    • 尿失禁:
      メースパウダー1.5gを1日2回、骨盤底筋トレーニングと併用することで、症状の大幅な改善が見られることが示唆されています。


推奨用量

  • 成人
    • 月経困難症:
      メース3gと Cassia fistula 21g を煎じて、月経開始前3日間服用する方法が試されています。
    • 尿失禁:
      メースパウダー1.5gを1日2回、骨盤底筋トレーニングと併用して3か月間使用。

薬物相互作用

  • 中枢神経抑制薬:
    メースの成分(メチルエウゲノール、イソエウゲノールなど)は鎮静作用を持つため、他の中枢神経抑制薬との併用で相加効果の可能性があります。

  • CYP酵素誘導作用:
    マイリスチシンはCYP1A1およびCYP1A2を誘導する可能性があり、これらの酵素によって代謝される薬剤の効果を減少させる可能性があります。


作用機序

メースの主要成分には、マイリスチシン、サフロール、エストラゴールなどが含まれます。これらの成分は、抗がん、抗炎症、抗菌、および免疫調節作用を示す可能性があります。


分類

  • CYP1A1およびCYP1A2誘導剤
  • 鎮静剤
  • 免疫抑制剤

メースはスパイスとして広く使用されていますが、高用量の使用や医薬品としての利用には注意が必要です。


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