ハンゲ(Pinellia Ternata)

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学名

  • Pinellia ternata
  • シノニム: Arisaema cochinchinense, Arum dracontium

科名

サトイモ科(Araceae)


概要

ハンゲは高さ約20 cmほどの植物で、中国、日本、韓国が原産です。現在はヨーロッパや北米でも侵入種として確認されています。薬用には主に塊茎(根)が使用されます。特に漢方薬として広く利用されています。
生の状態では、カルシウムシュウ酸の針状結晶(raphides)の存在により、口腔、喉、消化管に強い刺激を与えるため、使用前に水に浸す、アルカリ、ショウガ、ミョウバン、甘草などで処理して毒性を除去します。


主な特徴

  • 伝統的な漢方薬で多くの疾患に使用されていますが、科学的な有効性の証拠は乏しいです。
  • 経口使用は潜在的に危険とされ、特にエフェドリンアルカロイドを含むため、深刻な心血管系や神経系の副作用を引き起こす可能性があります。
  • 米国食品医薬品局(FDA)は、伝統的なアジア医薬品の一部を除き、ハンゲを含むサプリメントを禁止しています。

使用目的

経口で使用される場合

  • 吐き気
  • 妊娠悪阻(妊娠による吐き気や嘔吐)
  • 避妊
  • インフルエンザ、豚インフルエンザ
  • 肥満
  • 炎症

加工処理されたハンゲ(甘草、石灰、ミョウバンを用いて処理):

  • 不眠症の治療に使用されることがあります。

安全性

  • 潜在的に危険(POSSIBLY UNSAFE)
    ハンゲにはエフェドリンアルカロイドが含まれており、米国では禁止されています。心臓発作、脳卒中、けいれんなど、深刻な副作用が報告されています。

  • 妊娠および授乳中
    十分な信頼できる情報がないため、使用は避けてください。

副作用

  • 生のハンゲ塊茎は、経口摂取時に重篤な消化管刺激を引き起こします。
  • エフェドリン含有のため、心血管系および神経系に深刻な副作用を引き起こす可能性があります。

効果

評価に信頼できる十分な証拠がない用途

  • 不眠症
    メタアナリシスでは、漢方薬に含まれるハンゲが不眠症治療の総有効率を23%改善するとされていますが、これがハンゲ自体の効果か、他の成分の効果かは不明です。また、研究方法の質の低さや出版バイアスが結果の信頼性を制限しています。

さらなる研究が必要です。


投与および使用法

  • 成人
    一般的な用量については、十分な研究がありません。

標準化と製剤化

ハンゲの標準化に関する十分な信頼できる情報はありません。


相互作用

薬物との相互作用

  • バルビツール酸系薬物(ペントバルビタール、フェノバルビタールなど)
    動物研究では、ハンゲ製剤が活動を低下させ、睡眠時間を延長することが示されています。バルビツール酸系薬物の効果を増強する可能性があります。

  • ベンゾジアゼピン系薬物(ロラゼパム、アルプラゾラム、ジアゼパムなど)
    同様に、効果を増強する可能性があります。

  • 中枢神経抑制剤(抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬など)
    効果を増強する可能性があります。

サプリメントとの相互作用

  • 鎮静作用を持つハーブやサプリメント
    セントジョンズワート、カモミール、バレリアンなどのハーブとの併用で鎮静作用が増強される可能性があります。

薬理作用

  • 使用部分: 塊茎(根)

    • 含有成分:エッセンシャルオイル、アミノ酸、有機酸、アルカロイド(例:トリゴネリン)、エフェドリン(約0.002%)。
  • 抗菌作用
    ピネロシドという成分は、黄色ブドウ球菌、アスペルギルス・ニガー、カンジダ・アルビカンスなどの細菌に対して効果を示します。

  • インフルエンザに対する作用
    ピネリック酸は、インフルエンザワクチンとの併用でIgAおよびIgG抗体の上昇を促進する可能性があります。

  • 肝薬物代謝酵素への作用
    ラットの肝ミクロソームを用いた研究では、シトクロムP450(CYP)3A1および3A2酵素を阻害することが示唆されています。ただし、ヒトにおけるCYP3A4酵素への影響は不明です。


まとめ

ハンゲは伝統的な漢方薬として使用されていますが、エフェドリン含有により心血管および神経系へのリスクがあるため、特に経口使用は避けるべきです。使用を検討する際は、医師や専門家に相談してください。


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